捜索 運び出されたのが斗槻の遺体ではない。 この異常な事態に滝村は素直に驚いた。 その遺体は確かに斗槻と似た体格で、同じくらいの年だが、明らかに顔は別人であったのだが、名札には「斗槻隆志」としっかりと書き込まれていた。 隆二は怒り、担当した医師に迫って霊安室を見るも、そこにもやはり斗槻の遺体はなかった。 そして、葬儀は遺体のないまま終った。 だが、隆二はあきらめていなかった。 涼子に「必ず斗槻を連れて来る!」と言い残し、葬儀にも出ずそのまま消えて行った。 一月後、隆二は終に斗槻の遺体の場所を探り当てていた。 それは東京都城南市にある壬上山、城南大学の裏手にある小さな山だ。 そこの崖側(西)にある狭い洞窟に、医療用のキャリーに乗った人間が消えてゆくのを見た者がいたのだ。 普通だったら考えられない事だ。 なぜなら、その洞窟は崖に空いた、ただの穴の様にしか見えないのだ。 道もないこんなところにどうやれば、人の乗ったキャリーが入ると言うのだろう。 普通なら怪談話と思い、一笑に伏すのがオチだが、隆二は違った、その話を信じ、一人その洞窟へ入ったのだった。 洞窟内は外から見るよりは大きいが、人一人が屈んでやっと通れる程度であった。 話の信憑性が益々薄れそうな場所だが、隆二はなおも奥へと進んだ。 だが、おかしな事が起こった。 突如、隆二の目の前に鉄製の滑らかな扉が現れたのだ。 隆二がそれに触れると、シュッと空気が抜けるような音と共にその扉が左右に開いた。 中はまるで医療施設のように白く、静寂が満たし、電子機器特有のイオン臭がたち込めていた。 隆二は驚したままその白い通路を歩き出した。 |