ABOUT‐THE‐STORY2
捜索


運び出されたのが斗槻の遺体ではない。
この異常な事態に滝村は素直に驚いた。
その遺体は確かに斗槻と似た体格で、同じくらいの年だが、明らかに顔は別人であったのだが、名札には「斗槻隆志」としっかりと書き込まれていた。
隆二は怒り、担当した医師に迫って霊安室を見るも、そこにもやはり斗槻の遺体はなかった。
そして、葬儀は遺体のないまま終った。
だが、隆二はあきらめていなかった。
涼子に「必ず斗槻を連れて来る!」と言い残し、葬儀にも出ずそのまま消えて行った。

一月後、隆二は終に斗槻の遺体の場所を探り当てていた。
それは東京都城南市にある壬上山、城南大学の裏手にある小さな山だ。
そこの崖側(西)にある狭い洞窟に、医療用のキャリーに乗った人間が消えてゆくのを見た者がいたのだ。
普通だったら考えられない事だ。
なぜなら、その洞窟は崖に空いた、ただの穴の様にしか見えないのだ。
道もないこんなところにどうやれば、人の乗ったキャリーが入ると言うのだろう。
普通なら怪談話と思い、一笑に伏すのがオチだが、隆二は違った、その話を信じ、一人その洞窟へ入ったのだった。
洞窟内は外から見るよりは大きいが、人一人が屈んでやっと通れる程度であった。
話の信憑性が益々薄れそうな場所だが、隆二はなおも奥へと進んだ。
だが、おかしな事が起こった。
突如、隆二の目の前に鉄製の滑らかな扉が現れたのだ。
隆二がそれに触れると、シュッと空気が抜けるような音と共にその扉が左右に開いた。
中はまるで医療施設のように白く、静寂が満たし、電子機器特有のイオン臭がたち込めていた。
隆二は驚したままその白い通路を歩き出した。

NEXT STORY