「本人に聞いてみればいい」
滝の叫びに男はそう答え、指すように扉を見る。
それに滝はハッとして立ち上がると、同じようにその扉を見ると、ゆっくりとその扉が開き、牙の生えた、クロ
ムシルバーの髑髏マスクを被った男が立っていた。
THE
MASKD RIDER REBORN
第三章 生
第十話
真実の虚言
それは、あまりにも突拍子もない話ではあった。
平和を維持し守るために必要なこと。
それが、この話の主体だ。
ここ数年間、紛争や内乱、内戦といった大小問わずの、小競り合いが起こってはない。
そう、四年前チュニジアまで延びた、リビアの民族紛争以来戦争らしい戦争はおこってはいなかった。
もちろん、各地で宗教間や民族間のにらみ合いは続き、ゲリラやテロ活動もなくなったはけではないが。
しかし、それでも上辺だけは、確かに”平和”と呼べた。
だが、何十年かぶりに訪れた平穏に、世界中は不安を持ち続けていたのだ。
平和こそ不安。
人間は戦う動物ではないかと、痛感させられるほどに。
だから、世界中の人々はこう言った。
「何を賭しても、この平和を維持しよう」
と。
そして誰かが、それに応えた。
それが国連科学兵器研究機関(UN.CARL)。
その彼等が出した答えは、原因となる因子の排除と、もし起きた時には速やかに対処し、終息させること、そし
てそれは、いかなる方法をとっても、確実に完遂させること。
そして、それに答えるため、あらゆる状況において確実かつ、完全に任務を遂行させる兵士が必要だった。
あらゆる状況条件に左右されず、高い戦闘力を有し、使い減りのない兵士。
つまり、必要なのは強さと不死。
しかし、提示するのは簡単だが実現は難しい。
これを実現するために、五人の科学者が集められた。
その誰もが、好奇心を満たすために犠牲をいとわない、いわゆる狂科学者(マッドサイエンティスト)と呼ばれ
る者達だ。
そして、彼等が生み出したのが髑髏マスクのサイボーグ達、本郷やこの男だった。
だが、本郷が完全体として生み出されることになったことを機に、その科学者等の研究チームは解散させられる
ことになったのだが、その科学者達はあきらめず、その与えられた財力で新たに研究機関を創ったのだが、その行
動はもとである国連機関に反感を得ることになり、その崩壊を願う者達が本郷のテストを兼ねておくったのだ。
そう、滝が追っていた、いや、追わされていたのがこの組織だった。
が、本郷から託された全ての証拠は、改ざんされたもの、すべて組織を追うための本郷の方便。
そして滝も警察機関もそれに踊らされていた。
政府機関の介入は滝を信じ込ませるため、滝の行動は事態を混沌化し、真実を曇らせるため。
そう、滝は、本郷の手によって体よく踊らされていたのだ。
*
ゴシャア!!
数体の飛蝗男が弾き飛ばされ、壁にぶつかりながら絶命する。
隼人はそのマスクの双眸を、赤黒く煌かせて立ち上がった。
飛蝗男が一気に襲いかかるが、隼人は意に介せず、先ほどとは違い、何の迷いもなくその飛蝗男を叩き殺す。
頭を掴み壁に叩きつけ、足を掴み二つに引き裂く。
無慈悲な殺戮。
それはまるで、機械の様。
隼人の意思は一片も感じられない。
首をはね、頭を砕き、確実に殺す。
飛蝗男共はなおも襲いかかるが、隼人の常軌を逸した攻撃力の前に、なす術もなく殺戮されて行く。
例えるなら高速ローラのように、何もかも飲み込み磨り潰す。
暗い廊下は血の斑でうめられ、その壁面を赤黒く染めて行く。
返り血をまとった隼人は、まるで死神の様。
だが、飛蝗男共もただ殺されはしない。
数体の飛蝗男が羽根を広げ、その中羽根を激しく振動させた。
やがてその振動音が聞こえなくなると、死骸が弾け、壁が軋みながらヒビを走り、そして、隼人のマスクにも、
ヒビが走り始めた。
第三章:第十話 真実の虚言 了